停電すると、水も止まります|ゲリラ豪雨の日に「買い出しに行かない」ための備え
停電すると、水も止まります|ゲリラ豪雨の日に「買い出しに行かない」ための備え

停電が起きたとき、真っ先に思い浮かぶのは照明や冷蔵庫かもしれません。しかし実際には、蛇口から水が出なくなるという事態が同時に起こります。特にマンションやビルにお住まいの方は、その可能性が高くなります。

 

そして近年増えているゲリラ豪雨や線状降水帯による大雨は、事前の予測が難しく、降り始めてから避難や買い出しに動くのでは間に合いません。

 

この記事では、停電と断水が同時に起こる仕組みと、「雨の日に外へ出ない」という選択を可能にする備えについて整理します。


停電すると、なぜ水道が止まるのか

 

 

水道管そのものが壊れていなくても、建物内で断水が起こることがあります。原因は給水ポンプの停止です。

大阪市は、高層建築物では水道管自体は断水していなくても、高層階まで水を送るポンプが停電により停止すれば建物内で断水が起こると説明しています。

マンションの給水方式は主に3つあり、停電時の挙動がそれぞれ異なります。


受水槽+加圧ポンプ方式(ポンプ直送方式)

水道本管の水をいったん受水槽に貯め、加圧ポンプで各戸へ送る方式です。近年のマンションで主流となっています。

停電するとポンプが止まり、1階から最上階まで全戸で水が出なくなります。 受水槽の中には水が残っていますが、蛇口までは届きません。


直結増圧方式

水道本管の圧力にポンプで増圧を加え、各戸へ直接給水する方式です。受水槽を持たないため衛生管理の面で採用が増えています。

停電するとポンプが止まり、上層階から断水します。 ただし水道本管の圧力が生きていれば、2〜3階程度までは水が出る場合があります。何階まで使えるかは建物によって異なります。


高置水槽方式

受水槽の水を屋上のタンクへ汲み上げ、そこから重力で各戸へ落とす方式です。

停電直後は、タンクに残っている水を使えます。 重力で給水しているためポンプの稼働に依存しません。ただしタンクの水を使い切れば、汲み上げができないので断水します。


非常用給水栓を確認しておく

受水槽や加圧ポンプの流入側に非常用給水栓が設置されている建物があります。停電中でも、ここから水を取れる場合があります。1階の散水栓が使えるケースもあります。

福岡市も、非常用水栓の有無と設置場所については建物の管理会社・管理組合に確認するよう案内しています。

ご自宅のマンションがどの給水方式か、非常用給水栓があるか。平時のうちに管理会社へ確認しておくことをおすすめします。


井戸水を使っている場合

一部の戸建てや施設では井戸水を利用していますが、汲み上げポンプは電動です。 停電すると水を汲み上げられず、完全に止まります。「井戸があるから水は大丈夫」とは言えない点に注意が必要です。



ゲリラ豪雨は、予測して動くことが難しい


台風は数日前から進路が予測できますが、局地的な集中豪雨は事情が違います。

積乱雲が急速に発達して短時間に激しい雨をもたらすため、「まだ大丈夫だろう」と思っているうちに状況が変わります。線状降水帯による大雨も、発生の予測精度には限界があります。

つまり、降り始めてから買い出しに出るという行動は、そもそも成立しにくいのです。雨が強くなってから店に向かい、帰路で水位が上がる。この順序が最も危険です。



雨の日に車で出かけることの危険

 


「近所のスーパーまでなら」と車で出れば済むように思えます。しかし冠水した道路は、想像以上に危険です。


水深と車への影響

浸水深による影響は段階的に変わります。

  • 10cm程度 — 通常どおり走行できる

  • 10〜30cm — ブレーキの効きが低下する

  • 30cmを超える — エンジンが停止し、車が動かなくなる

東京都の資料では、水深がドアの下端にかかると水圧で内側からドアを開けるのが困難になり、ドアの高さの半分を超えるとほぼ開けられなくなるとされています。

JAFも、アンダーパスなどの周囲より低い道路では水かさが急激に増えて脱出が困難になることがあるため、安易に冠水路へ入らないよう呼びかけています。


アンダーパスは特に危険

アンダーパスは周囲より低くなっているため、大雨のときに水が集まります。国土交通省の資料によれば、全国のアンダーパスは約3,700箇所(令和7年3月末時点)にのぼります。

問題は、溜まった水が泥やゴミで濁っていて、深さが分からないことです。「これくらいなら通れる」という判断が、そのまま立ち往生につながります。

過去の水没事故には「夜間」「ゲリラ豪雨」「進入後の急激な水位上昇」という共通点が指摘されています。数分で状況が変わるため、判断の余地がほとんどありません。


徒歩でも安全とは限りません

車を避けて歩けばよい、というわけでもありません。

浸水した路面ではマンホールの蓋が外れていることがあります。千葉県で発生した令和8年8月の大雨でも、マンホールの蓋が飛散した事例が報告されています。濁った水の中では、足元の穴は見えません。

側溝や用水路との境目も分からなくなります。冠水した道を歩く行為自体に、相応のリスクがあります。


冠水した道に入ってしまったら

万が一、車で冠水路に入って動けなくなった場合は、水位が上がる前の脱出が最優先です。

窓が水面より上にあるうちに窓を開けて外へ出ます。電動ウィンドウは浸水で動かなくなることがあるため、開かない場合は緊急脱出用ハンマーでサイドガラスを割ります。フロントガラスは合わせガラスのため割れません。 割るのは側面のガラスです。

脱出用ハンマーは、座ったまま手が届く位置に置いておくことが大切です。トランクに入れていては意味がありません。



だからこそ「動かずに済む」備えを


ここまで見てきたとおり、大雨のさなかに外出することには複数のリスクが重なります。

  • 停電で水が止まり、調理も洗い物もできない

  • 冠水した道路は車でも徒歩でも危険

  • そもそも予測が難しく、動き出したときには手遅れになりうる

これらをまとめると、対策はひとつに集約されます。雨が降る前から、家の中で完結できる状態にしておくことです。

備えとして意識したいのは次の3点です。

加熱しなくても食べられるものを含める。 停電すれば電子レンジもIHも使えません。カセットコンロがあっても燃料には限りがあります。そのまま食べられる食品を一定量持っておくと、選択肢が確保できます。

 

水を使わずに食べられるものを含める。 断水すると、調理用の水も洗い物の水も貴重になります。水を加えずに食べられる食品であれば、備蓄した飲料水を飲用に回せます。

普段から食べ慣れておく。 災害時に初めて口にする食品は、想像以上に食べにくく感じられます。日常的に消費して補充するローリングストックを取り入れれば、味を確認しながら備蓄を維持できます。



よくある質問


Q. 自分のマンションの給水方式は、どうやって調べますか。

A. 管理会社または管理組合に問い合わせるのが確実です。屋上に水槽がある、敷地内に受水槽があるといった外観からある程度推測できますが、非常用給水栓の有無も含めて確認しておくことをおすすめします。


Q. 高置水槽方式なら停電しても安心ですか。

A. タンクに残っている水を使い切るまでの間は使用できますが、それ以降は断水します。安心材料にはなりますが、備蓄が不要になるわけではありません。


Q. 停電はどのくらい続きますか。

A. 状況によって大きく異なります。数時間で復旧することもあれば、数日に及ぶこともあります。設備の被害状況や復旧作業の進み具合に左右されるため、事前に見込むことはできません。


Q. 冠水しやすい場所は事前に分かりますか。

A. 国土交通省のハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」で、道路防災情報の「道路冠水想定箇所」を表示できます。各地方整備局も道路冠水注意箇所のマップを公表しています。通勤経路や生活圏に該当箇所がないか、平時に確認しておくと判断が早くなります。

 

Q. 停電中に発電機を使ってもよいですか。

A. 屋内やガレージなど換気の悪い場所で発動発電機を使用すると、一酸化炭素中毒の危険があります。実際に死亡事例も発生しています。使用する場合は必ず屋外の風通しのよい場所で運転してください。

 

 

まとめ

 

  • 停電すると、水道管が無事でも給水ポンプの停止で建物内が断水する

  • マンションの給水方式によって挙動が異なる。管理会社への事前確認が有効

  • 井戸水も電動ポンプを使うため、停電すると止まる

  • ゲリラ豪雨は予測が難しく、降ってから動くのでは間に合わない

  • 冠水路は車で30cm、徒歩でもマンホールの危険がある

  • 対策は「雨の日に外へ出なくて済む状態を、事前に作っておく」こと

 

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参考資料

 

 

※本記事の情報は2026年8月18日時点のものです。給水設備の仕様は建物により異なります。詳細は管理会社・管理組合にご確認ください。